山本周五郎 ユーモア小説集
山本 周五郎
周五郎のユーモア小説は単純ではない。ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。「ユーモアは、もしかすると人が生きる〈真実〉に一番近いのかもしれない。夏目漱石はユーモアを〈人格の根底から生ずる可笑味〉と評した」(新舩海三郎解説「時代のなかのユーモア」より)。
好評既刊『人情物語 武家篇』『人情物語 市井篇』『心ばえの物語集』に続く、山本周五郎の珠玉の短編集。
山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。
新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。
判型・頁数 | B6判変形並製・336頁 |
定価 | 1300円(税込) |
ISBN | 978-4-7807-2235-2 |
出版年月日 | 2023年2月10日 |
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