ペスト時代を生きたシェイクスピア
その作品が現代に問うもの
川上重人
シェイクスピアは1564年にイングランド中部に生まれ、長じてロンドンで活躍する。彼は生涯で6度、ペストの流行を体験しており、その真っ只中で劇を執筆していた。しかし、「ペストで死んでいく人を登場させたり、ペストを主題とした作品はまったく書いていない」「数々の死を描きながらも、もっとも社会的な深刻な問題であるペストについて直截的に表現するということはなかった」(第Ⅰ章)。著者は「シェイクスピアは恐るべきペストを記録として残すというリアリズムではなく、人間をあるがままに描くことに主眼をおいた」と捉え、不朽の名作というべき五つの代表的作品のなかに、希代の劇作家が見つめた時代的背景を読み解いていく。
読者は、よく知られた作品が新たな色彩を帯びていくことに一驚されるだろう。そして、「シェイクスピアの作品(芝居)は、ペストによる人々の不安や恐怖、そして苦悩をやわらげるものであった。パワーあふれる役者の演技は、人々のそうした思いを代弁してくれるもので、明日へと生きる活力となった」(第Ⅰ章)と実感されるに違いない。迫力ある筆致に、思いはおのずとコロナ・パンデミックのいまに向かう。
第Ⅰ章 シェイクスピアはペストをどう描いたか ― プロローグに代えて
第Ⅱ章 五つの作品を読む
1 『ジュリアス・シーザー』
2 『マクベス』
3 『リア王』
4 『ハムレット』
5 『夏の夜の夢』
第Ⅲ章 危機の時代 ― シェイクスピアの作品が現代に問うもの
川上 重人(かわかみ しげと)=1950年福島県猪苗代町に生まれる。本名、前田登紀雄。日本シェイクスピア協会会員。東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)書記長、副委員長をはじめ、日本私大教連の役員を歴任。著書に『俺たちのはる・なつ・あき・ふゆ』『小さな位置』『シェイクスピアは「資本論」のなかでどう描かれたか』『名作が踊る「資本論」の世界』など。
判型・頁数 | B6判変型・208頁 |
定価 | 1200円(税込) |
ISBN | 978-4-7807-1816-4 |
出版年月日 | 2021年6月22日 |
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