音でみる心も色も
紅葉から慎太郎まで、作家が描いた視覚障害者像
髙林 正夫
見えないことはハンディだが おそらく決定的ではない
音で表す色があれば 心の波動は言葉が伝える 文学が抒情でなくなる
私は中途視覚障害者です。二〇歳前後の時、眼の異変に気がつき、病院回りをした結果、緑内障と診断されました。それ以来、視野が徐々に狭くなっていき、視力も少しずつ下がり、今では全く見えなくなってしまいました。私は大阪にある養護学校(現在の特別支援学校)勤務を経て、一九九三(平成五)年大阪市立盲学校(現在の大阪府立大阪北視覚支援学校)へ転勤しました。
中途視覚障害者の「私」と、作家たちが描いた視覚障害者像をまとめてみたいという「私」とを結びつけてくれたのが、この盲学校の片隅にあった「中江文庫」という資料書庫でした。そこから近現代作家たちの作品(小説や戯曲)リストを探し、学校図書館ボランティアの人たちの目と手を借りながら資料づくりを進めてきました。その資料を基に執筆に取りかかり、それをまとめたのが本書です。私なりの視点で、近現代作家たちが描いた視覚障害者像を点描してみました。(「はじめに」より)
尾崎紅葉 「心の闇」
国木田独歩 「女難」
小泉八雲 「耳なし芳一の話」
夏目漱石 「夢十夜」の第三夜
徳田秋声 「盲人」
永井荷風 「深川の唄」
泉 鏡花 「歌行燈」
森 鷗外 「山椒大夫」
武者小路実篤 「その妹」
正宗白鳥 「牛部屋の臭ひ」
芥川龍之介 「戯作三昧」
谷崎潤一郎 「盲目物語」
島木健作 「盲目」
北條民雄 「いのちの初夜」から「眼帯記」へ
壺井 栄 「大根の葉」
川端康成 「盲目と少女」
太宰 治 「盲人独笑」
内田百閒 「残月 柳検校の小閑」
平林たい子 「施療室にて」から「盲中国兵」へ
林 芙美子 「盲目の詩」
山本有三 「無事の人」
舟橋聖一 「女めくら双紙」
有吉佐和子 「地唄」
曽野綾子 「二十一歳の父」
水上 勉 「盲目」
城山三郎 「盲人重役」
井上ひさし 「藪原検校」
宮尾登美子 「藏」
デビット・ロペティ 「いちげんさん」
石原慎太郎 「再生」
髙林 正夫(たかばやし まさお)=1948年静岡県生まれ。大阪府立盲学校(現大阪府立大阪南視覚支援学校)理療科専攻科卒、佛教大学通信教育学部初等教育学科修了。その後、大阪府立茨木養護学校(現大阪府立茨木特別支援学校)勤務を経て、大阪市立盲学校(現大阪府立大阪北視覚支援学校)勤務。2009年、同校退職。現在、大阪府交野市在住。
判型・頁数 | 四六判・256頁 |
定価 | 本体2300円+税 |
ISBN | 978-4-7807-1695-5 |
出版年月日 | 2018年7月2日 |
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