墓仕舞い

墓仕舞い

在庫あり

文芸

著者

荒川 昤子

出版年月日

2020年6月3日

ISBN

978-4-7807-1967-3

判型・ページ数

四六判 上製(仮フランス)

定価

2600

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書籍説明

「専門医での再検査で『僧帽弁閉塞不全症』という病名を告げられた。ネットで調べるとさまざまなことがわかってきたが、いずれ手術はしなくてはならないようだ。病名が自分の体になじんできたころ、ふと、いつ死ぬかもしれない、という考えが浮かんだ。 能天気といわれるかもしれないが、七十を過ぎて初めて命の長さ、短さを具体的に考えた。ここ二年間に面倒を見てきた母と叔母を相次いで亡くしたこともあるかもしれない。私の命もそんなに長くはないかもしれない、と死が急に現実的に思われてきた。 次に浮かんだことが、作品をまとめておこう、という考えだった。そう思いはじめると、その気持ちがだんだん強くなっていった。作品は『自分の産み落としたもの』と巷でいわれているように、子どものいない私にとって、まさに作品は『苦労して産み落とし』たものだった。 そんなわけで、『僧帽弁閉塞不全症』と知ってから半年後には、私は作品をまとめて出版しようという気持ちになったのだった。 収録した九作は十年近くの間に書いたものだが、登場人物はほぼ一緒で、結果的に『ヨシ江』の後半の人生を追うことになった。似た作品もあるが、読み返してみると、大正に生まれた人間と戦後に生まれた人間を通して、女、家族、家制度、社会的意識などの急激な変容過程が表れているようにも思われる。 『ジェンダー』が盛んにいわれる今日このごろだが、思想的に成熟する以前に女である存在の不合理が言葉として表せないまま、情動のなかで右往左往する主人公を読者が感じていただけたならば、作者として喜びである。」(「あとがき」から)

最近旺盛に執筆されている荒川昤子さんの第三作品集、美しい装丁の本です。
四十代で夫に先立たれ、二人の娘を行商で育てあげた母、二人がそれぞれ都会に巣立っていったあと、上の娘の出産を機に都会に住みついて五十年、百歳で亡くなるまでの折々の葛藤を九つの短編にまとめてあります。
独りで老いてゆく現代を考えさせます。男親だったらもっと悲惨かも。遠慮のない女三人の心のひだを軽快に描いています。稲沢潤子・作家)

目次

父の骨

小さな旅

五分咲きの桜

捨てた手紙

午後のひととき

老いたきょうだい

うそ

墓仕舞い

はい チーズ

あとがき